荻悦子詩集「樫の火」より~「比率」
2019年4月24日
比率 太くない幹があり 高くない所で ふたつに分かれる ふたつの枝が より細い枝に分かれ 若い緑の葉を茂らせている 白い花房がさわさわ揺れている その木の根元から幹へ 幹から枝へ 木が伸びる方向にそって 鉛 […]
荻悦子詩集「樫の火」より~「紫」
2019年4月17日
紫 自転車を折りたたんだ 硝子の水差しに水を満たした 人に伝えたいことを思いながら 何ということもない作業を重ねる 短い旋律が湧いてきた 丸く膨らんだ花 大きめの薊の花が色を失っていく 初めは冴えた紫だった […]
荻悦子詩集「樫の火」より~「なつかしい人」
2019年4月10日
なつかしい人 散った花びらを握っている 乾いて褐色になり よじれたガーベラの花びら 綿毛の下に 細い種が付いている 一日一日を問い尽くし ほぐれた花びら 種との境にふわり冠毛を生やして 待っていた 鳥の柔毛 […]
荻悦子詩集「樫の木」より「影絵」
2019年4月3日
影絵 暮れかかるころ 真新しい教会の前を通った 教会の破風にはダビデの星が光っていたが 私はその先に用があるのだった 前方を男が歩いていた 男の右足の先に何か影があった 夕闇と見分けがつきにくい 影はすぐに […]
荻悦子詩集「樫の火」より~「往還」
2019年3月28日
往還 気づかないふりをするのに 疲れた いや 飽きてしまった 不意打ちに会い (そうだったのか) 隠されていたことを (とうに気づいてはいたが) いまはっきりと受け止める アスファルトの広い道 交差点の中央が急に盛り上が […]
終わりの空~詩集「流体」より
2018年11月27日
終わりの空 丸い錫の写真立てに 入れておくのは 他人の冬 夢と呼ぶな 幻とも なつかしい なかった聖日 ここではない土地の 雪の降る祝日 椅子に上着を掛けたまま 人はわけもなく人を呼んで なごりの空を眺めに立った 裸木の […]