荻悦子詩集「時の娘」より「城」
城 風化が進行する高い城壁 ひと群れ 菊科と思われる草がとりつき 橙色の花を咲かせている 肋骨交夜穹窿 堅固な梁でドームを支え 高く より高く 鈍化への烈しい希求 絶対を求める精神は 血まみれの手を要求した 嫌悪 憎しみ […]
追憶のオランダ(33)奇妙な地形-1
オランダの地図を見ていると奇妙な地形があることに気付きます。10万分の1の縮尺の地図であれば、それははっきりと分かります。そこは水であることを示す青色で塗られていて、○○Meer(メーア), △△Plas(プラス)と 書 […]
末っ子十男 命名の怪
私は農家の十男。きょうだい全11人の末っ子。長女が生まれて以来、男が十人、私はそのトリ。今なら「テレビ番組の大家族特番」だ。姉兄とは母親父親ほど年齢が離れており、すでに上8人は黄泉に旅立った。 進学時の申請書や会話の時に […]
シンゴ旅日記インド編(その56)寅さん 天竺を語るの巻
お兄ぃさん、ちょっと声をかけさせてもらってよろしゅうござんすか。 さっきからお見受けしていますと、こんな飲み屋の食いモンを旨そうに食べておられますが、そんなに旨いもんでございますかね?えっ、久しぶりの日本の飲み屋なんで、 […]
新加坡回想録(15)映画
シンガポールはよく文化のない国といわれます。文化のない国などあるはずがない、大なり小なりあるはずだと反論する方もおられるでしょう。考えてみるとどちらも正しい一面があります。要は、何をもって文化と定義するかの問題です。 た […]
荻悦子詩集「時の娘」より「湖」
湖 160年あまりも昔 ひとりの詩人が 湖を眺めにかよったという丘の上 記念碑のそばに座ると 黄色い野の花がそよぐ草原の先に 浮かびあがる湖 鈍い灰青色の湖面 ぽつりぽつりと小舟の帆 突風に襲われた病身の女性を 救った青 […]
追憶のオランダ(32)KLMのおまけ
オランダのナショナル・フラッグ・キャリアのことを日本ではKLMオランダ航空と呼んでいますが、KLMの正式名称 Koninklijke Luchtvaart Maatschappij にはオランダという国名はついていません […]
シンゴ旅日記インド編(その55)インド駐在員の話の巻
昨年の正式赴任前にインドに出張し日系企業のお客様にご挨拶して回りました。 その時に駐在員の皆さんからお聞きした話です。 こちらからの質問は単身赴任なので次のようなものでした。 『食事はどうしているか?』 『掃除はどうして […]
新加坡回想録(14)半袖スーツ
シンガポールは赤道直下の熱帯の国です。その暑さは半端ないものなので、服装は当然それに合わせたものになります。休日ならTシャツに短パンで充分で衣装入らずということもできますが、それが却って、ファッションを楽しむことができな […]
荻悦子詩集「時の娘」より「白馬」
白馬 内海の白浜を 疾走する白馬 ざわめき揺れあがる おまえの豊かなたて髪は 波よりも優美な白銀の流れ 砕ける波頭よりも繊細な 瞬時のきらめき カマルグの原野 潮のさす沼地に戻れば おまえの仲間とともに 闘牛の牛たちも放 […]