プロカメラマンの秘密を探る⑪~鳥を撮る

多摩川、空、雲、富士山、そしてサギやカワウ、毎日見る景色はそれほど変わり映えしない。鳥に特別なこだわりがあるわけではないが、自然と毎日鳥を見ることになる。しかし、鳥は気まぐれ、群なす数も違えば場所も定まらない、なかなかこちらが思うようには飛んでくれない。

ある年の年末近く、いつもの通り多摩川に出かけた。上河原堰辺り、調布側から南側を見ると富士山が見える。時々朝焼けで真っ赤に染まることもあるので一応チェックする。その時、遠くからシラサギが飛んでくるのが見える。「青空をバックに富士とシラサギ」という構図が浮かぶ。シラサギが富士を横切って飛ぶ瞬間を狙う。

それで、撮れた一枚がこれだ。富士山の真上に3羽のシラサギが右肩上がりに一直線に並んでくれた。まるで、「こんな感じでどうですか?」とでもいうように。気ままな鳥がこちらの意図を理解しているはずはないのに、ま、こんなこともある。

改めてこの一枚を見つめてみる。この場合、主役はどれか難しい。私は、富士を撮りに来たのか、堰を撮りに来たのか、シラサギを撮りに来たのか。下半分の背景は堰を切って激しく流れ落ちる大量の水。上は”静寂” 下は”轟音”。音には聞こえないが、感じることはできる。もう、主役論議はどうでもいい。悪くない一枚だと思う。

~つづく~
(八咫烏)

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