詩~「空・五月」

 空・五月

 

野鳥が
ピシピシ
鳴きながら
空の端を綴じて行く

目の粗い布
漉されるというより
自ら迸り出る
果汁
朝の音

松の木の
新しい銀の花穂
幹から枝へ
絡みついた蔦にも
柔らかな若葉が重なって垂れ
野鳥の鋭い声を吸う

双眼鏡を手に
振り返って
父を呼ぶ
いつまでも四歳の
神学者の空にいる娘

野鳥が
ピシピシ
鳴きながら
時の涯を綴じて行く

 

荻悦子(おぎ・えつこ)
1948年、新宮市熊野川町生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。作品集に『時の娘』(七月堂/1983年)、『前夜祭』(林道舎/1986年)、『迷彩』(花神社/1990年)、『流体』(思潮社/1997年)、『影と水音』(思潮社/2012年)、横浜詩人会賞選考委員(2012年、16年)、現在、日本現代詩人会、日本詩人クラブ、横浜詩人会会員。三田文学会会員。神奈川県在住。

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