フランスあれこれ109 パリの潔癖家族

日本と比較して、パリは決して清潔な街ではありません。ヨーロッパ全般に靴のまま居間に上がります。玄関口に靴の泥拭いのマットのあるのは上等、いずれにせよ下足のまま部屋に入ります。一般の住宅では(高級住宅は別として)部屋にビデはあってもトイレは一旦廊下に出てご近所と共用というのが多いようです。

パリ市内でトイレと言えば先ずはカフェで借りるのが普通、狭い階段を下に降りてドアを開けると1m四方位の白いタイルで中央に一つの穴が開いているだけで、それも男女共用、あげくの果ては利用後一応自分で洗浄、即ち天井から降りているロープを引っ張って水で洗浄するのですが、これがびっくり!大量の水が飛び出して足元が水浸しなんてことも。ロープを引っ張ると同時にトイレを飛び出してドアを閉めるのですが、先ず一度は失敗するのが通常。

さて、タイトルの本題です。ある日(およそ60年位前の話です)ちょっとしたことで知り合ったご近所から、夕食にお招きいただきました。最初で最後の超潔癖家族のお話です。 パリでは珍しい一戸建て別荘風の建物で、入り口を入ってまずびっくり、それは素晴らしい庭園でした。中央のライトが夕暮れの庭園を照らし、花壇もあでやか。少し小道を歩いて玄関へ。そこで靴を拭う訳でもなく靴カバーを拝借、そして部屋に進みます。広い居間もすっきり、整理整頓は無論、壁の絵画や棚の置物も出しゃばらず、実に落ち着いた雰囲気です。ちょっとした歓談も非常に素直という印象を持っています。頂いた名刺ではドクター(docteur)即ち博士となっていますが、事情があって現在薬品会社の販売促進だと言って笑っていました。やがてテーブルに、そしてワインで乾杯・・・お皿が変わるごと奥さまがそれを持って台所へ、帰りには次の料理と言った具合、家内が一度お手伝いと皿運びをしたのですがビックリして戻ってきました。台所には何もないと言います。最後に近いタイミングでお手洗いと称して私もお手伝いの真似でお皿を持って台所に入ったのですが本当に何もなく綺麗さっぱり!正直、私もビックリ!不思議と驚きでした。 暫くして本屋で”Interieurs Parisiens”(パリっ子のインテリア)という本を見つけて購入、これは今も私の本棚にあります。この本の紹介写真の一つがこの潔癖家族の内装ではないか?と思ったり、それとは真逆でとんでもないインテリアの紹介だったり、要はパリジャンは千差万別、ピンからキリまで色々だと実感する次第です。(写真は上記の本からです)

 

 

 

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