オランダ点描(24)同棲
日本の感覚で同棲といえば、どこか人目を気にせねばならない生活を想像してしまいがちですが、オランダでは少し事情が異なります。後ろめたいとか、憚ることがあるとかはまったくなく、成人した男女が結婚という社会契約を結ぶ前に試用期間とでもいうのか一緒に共同生活することです。家族も社会そのものもごく自然のこととして認めている習慣であり、オランダに限らず欧米ではごく普通のことのようです。したがって、同棲中の者も結婚したカップルと実質は変わるところはありません。法律的にも普通の社会の中でもキチンと二人の立場は保証されており、税金の面でも結婚しているものと同じ権利を享受できることになっています。
オランダでは大体どこの子供でも18歳くらいになると親元を離れて自活するようになます。というよりも、親自身が子供の独立のために家から出ていくように仕向けます。野生動物の親離れ・子離れのような感覚です。そして、男性も女性も皆適当に(?)相手を見つけ、結婚という概念にあまり縛られずに、ごく自然に同棲を始めます。真の独り立ちができるのはそれからずっと先の事にはなるでしょうが、そうやって独立心を養います。家を出たと言ってもなかなか生活は厳しく、しょっちゅう家に帰ってきたり、彼女・彼を連れてきたりしているようです。今、我が家のお隣さんは子離れ(お嬢さんですが)の時期のようです。
日本では、大学を出て会社勤めをするようになっても結婚するまではまだ親と一緒に暮らし、親の世話になっているものが大半ではないでしょうか。日本とオランダでは社会のなりたちと習慣が随分違うところがあるので、必ずしも同じ尺度では比べられませんが、どこか日本の若者は乳離れがなかなかできず甘ちゃんなのかもしれません。また、親の方も子離れが出来ず、結果的にそれが最近の引きこもりやニートの増加を助長しているのかもしれませんよ。
オランダでの入籍までの手順は、ちと面白いですよ。
まず同棲をはじめ、相手が自分にふさわしい相手かどうかじっくり確かめる。そのうち、自然と子供でもできれば、仲間を呼んで結婚(?)披露パーティーを開く。でもまだこの段階でも入籍しない人たちもかなりいる。入籍していようといまいと、実質には何も変わりはありませんから。最後に、この相手とは一生一緒だとお互い分かった時点(遅すぎる?)で、やっと入籍、これは大体市役所とかで二人の婚姻を登録する作業で、結婚式と言えば結婚式。広い会議室にお互いの親族・友人たちが集まり、その前で市役所の職員が裁判官のような古めかしい衣装を着て登場、「彼らは結婚したいと言っているが、何か問題はないか?反対するものがいれば、意見を述べなさい。」と。まるで、裁判。これは昔からの風習のようで、今は結婚式というイベントとして楽しくやっています。悪ふざけで、真顔で反対してみせるものも何人かいて、その場を大いに盛り上げています。意見が出尽くしたところで、「結婚、おめでとう。」