父の想い出~1. モールス信号
先週、まもなく満100歳を迎えようとしていた父親が天寿を全うしました。葬儀で喪主の挨拶をし始めた途端、ふと懐かしい風景を思い出しました。こみ上げるものがあり、涙が・・・。
お決まりの文句を中断して、思い出話を少しだけ話させていただきました。
旧国鉄に勤務していた父の仕事場は、新宮駅の二階にある電信室でした。
夜勤の日に、母親のつくった弁当を夕方届けるのが私たち姉弟の役割でした。
駅員さんに「とうちゃんに弁当を・・・」と言って改札を通りました。最初は遠慮がちだったのに、次第に顔パスで通れることが子ども心に誇らしく思えたものです。
父が右手で「トンツー、トンツー」と叩いていたのはモールス信号でした。横には、大きな機械(テレックス)があり、穴の空いたテープがカタカタと動いていました。
「これ何?」と尋ねると、「この穴は、A,B,Cの英語文字で、遠い遠い外国まで送れるんやで。たくさん穴が開いているけど、ここに、端のほうにひとつだけ穴があるやろ!これは「e」という意味なんや」「へー!」と不思議な感じでした。
その後、初めてABCを教えてくれたのは父でしたし、小学校から塾に通い始め、次第に英語に惹かれていったのも、駅でテレックスを見たことがきっかけだったような気がします。やがて、英語を使った仕事をしたいと思うようになり、実際、貿易の仕事では大いに役に立ちました。
つづく