追憶のオランダ(77)停電でも交通渋滞にならない

最近の日本では停電ということは滅多に起こらない、ということが当たり前のようになっています。昨年台風の影響で一部の地域が長期間大停電に見舞われたことはむしろ例外中の例外のようにさえ思ってしまいますが、電力事情のあまりよくなかった私の子供の頃はよく停電が発生していた記憶があります。
今でももし停電になるとテレビをはじめとして日頃当たり前のように使っているすべての身の回りの電気製品がとたんに使えなくなり、電力会社に復旧してもらうまで自分自身ではどうすることもできず、ある意味では昔よりも電力に頼りすぎているがために停電時の不便さは増大するかもしれません。まして、それが夜だとしたらなおさらです。
オランダは電力事情がいいと言われていましたが、私のいる時に何度か停電を経験しました。その一回がロッテルダム市の大半が停電する大停電でした。その時は昼間で事務所にいたのですが、室内の照明は消え空調も止まりました。すぐさま予備電源が作動したのですが停電が長引き予備電源もそのうち使えなくなりました。
困ったことは、建物への出入り口が電動になっていたため、停電と同時に閉まったままとなったことでした。つまり、建物の中に閉じ込められた状態です。ビルにある事務所というのは照明が消えると昼間でも薄暗いのです。メインの入り口は閉じたままですが、非常口だけは手動なので出入りはすべてそこから、不便極まりない。さらに、水道も(トイレも含む)使えなくなったことでした。これは、先ごろ我がハイムでも経験したことですね。そこで、外はと見ると信号機などもすべて消えているのですが、交通は思ったよりもスムーズに流れているようなのです。事務所の近くの大きな交差点とかロッテルダムの中央駅前あたりでは大渋滞が発生しているのではと思ったのですが、日ごろあまり聞かない車のクラクションの音が時折聞こえるものの案外渋滞にもならず車は動いているのです。これには驚きと同時に感心しました。そして、おそらく日本ではこうはいくまいと思いました。その大きな理由は「右側優先」の交通ルールがしっかりと定着しているからに他ならないと思われました。たとえ四方から交差点に突っ込んできても、わずかな差で自分から見て右側の車を優先させることで、四すくみ状態が避けられるというもの。すべてこれで片付くということではないと思いますが、信号機に頼れなくなった時でも、このルールがある限り無用な混乱は避けやすくなっているということのようでした。日本にこれを当てはめれば、右ハンドルですからオランダとは反対に「左側優先」というルールを皆が徹底できれば、何かの理由で信号機が作動しなくなった時にも無用の大渋滞はある程度避けられるかもしれません。

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