新加坡回想録(4)資源を持たない国の悲哀
「増える国土面積」の記事でもお伝えしましたが、シンガポールという国は奄美大島ほどの大きさしかない島国です。国の発展・繁栄を目指すには当然何らかの産業を興していかなければなりませんが、国土が極端に狭いというハンディキャップは拭いようのない事実でありました。
大きな森があれば林業、広い土地があれば農業ができますが、木を切るべき森もなければ耕すべき土地もありません。良い漁場があれば漁業もできますが、ほとんどが外国から移民した人々であり伝統的な漁業で栄えたわけでもありませんでした。
島で最も高いところでも標高わずか173mほどの丘(ブキティマヒル)であって高い山がなく、水さえマレーシアから調達しなければならないという国です。とにかく狭さを少しでも補うべく海を埋め立てて国土を増やしてきましたがそんなことで根本的な解決にはなりません。
さて、1965年にマレーシアから分離独立したシンガポールは、どのようにしてあの驚異的な経済発展を遂げたのでしょうか?農村という後背地を持たないシンガポールは食料の自給自足は不可能で、生活必需品のほとんどを外国からの輸入に頼っている状況で、国民の誰もが明日からの生活に不安を感じていました。
政府がとった政策の第一は、外国企業の誘致でした。外国企業を誘致すると言ってもそれほど簡単なことではありません。政治的な安定度はどうなのか、労働力の勤勉さなど質的にはどうなのか、投資した資本を回収できる可能性はどうなのか、シンガポールとアジアの他の発展途上国との比較で優位性はあるのかなど、進出する方にとってはあらゆるリスクを検討しなければならないでしょう。
結果的には、外国資本の誘致に成功して、他のアジアのどの国よりも急激な発展を達成しましたが、その理由は何だったのでしょうか。この辺の事情は今後の記事に譲りたいと思います。
(西 敏)