シンゴ旅日記ジャカルタ編(17)  散歩しながら考える(接ぎ木)の巻

散歩しながら考えるの巻 接ぎ木    (2019年9月記)

朝散歩で住宅地のお家の庭先の草花を眺めて歩きます。

ところどころに色の違う花の咲いたハイビスカスの植木や、すくっと伸びた幹の先に葉がトリミングされた植木がありました。

一本の木に複数の色を持つ花が咲くのだろうか?

綺麗にトリミングできる木があるのだろうか?

それらの木々に近づいて枝をよーく見てみるとそれらは「接ぎ木」だったのです。

植物が子孫を増やしていくための生殖方法には有性生殖と無性生殖があります。

接ぎ木は無性生殖のうちの一つである栄養生殖なのです。

そして接ぎ木と言えば桜のソメイヨシノが有名です。

ソメイヨシノは江戸後期に伊豆諸島のオオシマザクラとエドヒガンとの交配で作られたクローンなのです。ソメイヨシノは江戸の染井村の植木職人たちによってつくられ、西行法師で有名な吉野と合わせて名付けられ、昭和の高度成長期に日本中にたくさん植えられました。

そのソメイヨシノは地域ごとで一斉に花を咲かせます。

それはソメイヨシノが接ぎ木や挿し木で増えていったからです。

接ぎ木の根のある下の部分を台木といい、切断してつなぐ上の部分を穂木(接ぎ穂)と言います。植物の根の上(台木)に目的の植物の枝(穂木)をつなぐため台木と穂木は近縁な方が定着しやすいのですが、実際には同種ではない組合せもよく使われます。うまくいけばつないだ部分で互いの組織が癒合し、一つの植物のような姿で成長します。接触させた位置より上は穂木から生長したものであり、それより下は台木の植物のものであり、遺伝的に異なっています。

ソメイヨシノは自家不和合性植物で同じ木の花のめしべとおしべでは受精しません。

違う木のソメイヨシノとは受精し種子はできるのですがクローンなので発芽できません。

他の桜の花とは受精しますが違う遺伝子を持つ桜になってしまいます。

ですから接ぎ木でできたソメイヨシノはすべてが同じ遺伝子を持っているので地域ごとに同時に花を咲かせるのです。そして、同じ遺伝子を持つがゆえに耐性のない病虫害には全ての木がやられてしまうという弱点も持つことになるのです。

ソメイヨシノの両親であるオオシマザクラは成長が早く、エドヒガンは丈夫で長生きする桜だったため、根が浅く広く張ります。それで最近では根本近くまで舗装されたり、花見の人で土の表面が固まって成長が阻害されたり、温暖化による悪影響も受けつつあるようです。

青森の弘前城のある弘前公園には日本一古いと言われる樹齢130年のソメイヨシノがあり、東京の小石川植物園には樹齢140年のソメイヨシノの株があります。

なお、日本には桜の種類は野生種10種、自生種100種、園芸品種200種の桜があるとのことです。さて、私の好きなアデニウムにも接ぎ木で色の違う花を咲かせている植木もありました。

また、接ぎ木を野菜に応用したトムテト(またはポメト)はご存じですよね。

ナスとジャガイモの組み合わせはエッグ・アンド・チップスというのですよ。

でも接ぎ木は人間世界でいうと昔の武家や商家のご主人様がふがいない跡取りの代わりに優秀な婿養子をもらってお家の跡を継がせていくのに似ていますね。

 

丹羽慎吾

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