追憶のオランダ(64)アンティークタイルへの旅

私のオランダ生活はたかだか6年弱。当初からアンティークタイルを収集しようなどとは思っていなかった。しかし、気が付くと随分のめり込んだものだ。それも後半の3年の間に、である。それは、ある古書店でタイルに関するある本と出合ったのが直接の引き金になったように思う。それは、ヤン・プラウス( Jan Pluis )という人の書いた「Kinderspeelen op Tegels(タイル上の子供の遊び)」という題名の本(左の写真)で、文字通り「子供の遊び」をモチーフにしたタイルばかりを収集し一冊にまとめてある。その本の内容に魅せられて自分自身でも収集を始めてしまったのだ。それからというもの、骨董屋を見て回るのは当然のこと、美術館もあちこち見て回った。さらに、古い建物なども公開されているもの、由緒ありそうなレストランなど覗いて見たが、こちらは、実際に使用されている建物の中でどんなタイルが、どのように使われているかを見るいいチャンスでもあった。また、タイル専門の博物館へも何度も足を運んだ。それは、オランダ東部のアーンヘム( Arnhem ) の郊外にあるオッテロー( Ottelo )という町のタイル博物館、デルフトのランベルト・ファン・メールテン( Lambert van Meerten )、北部フリースラントのレーウワーデン( Leeuwarden )にあるプリンセスホフ( Princesshof )など。

 

オッテローのタイル博物館では会員にもなりいろいろな関連情報をもらった。なかでもタイル関連の出版物の案内やタイルの即売会の情報は私にとってはとても有難かった。案内があればその都度どこであれ出かけて行ったものだ。顔なじみになった何人もの骨董屋ともそんな即売会場で度々出会い、何枚も買い込む(体よく買わされる?)ことになる。そうそう、思い出した。なぜオッテロー まで行くことになったのか。普通ではなかなか考えがおよばない場所なのだ。それは、アムステルダムの小さな骨董屋で、そこの親父と話していて「それなら、一度オッテローのタイル博物館に行ってみるといい」と勧められたからだ。小さな町だからすぐ見つけられるというので、翌日すぐ車を走らせた。それ以降、何度通ったことか。右の写真はその展示風景。

デルフトのランベルト・ファン・メールテン、は由緒ある17世紀の旧宅を博物館にしたもので、壁面いっぱいに往時のタイルが展示してある。殆ど客が来ることがないので、いつも独り占めの感覚を味わえる貴重な場所だった。また、ここではタイル関連のいろいろな出版物を買った。右の写真はその図録。オランダ語は難しいが豊富な写真があるのは参考になった。さらに、プリンセスホフは、あのエッシャーの父が日本から帰国後に一時住んでいたこともあるという昔のフリースラント州の貴族の邸宅で、そこを陶器専門の博物館にしている。ちなみに、芸術家のあのM.C.エッシャー もここで生まれたと聞く。ここでもまたエッシャーと出会ってしまった。 (続く)

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