追憶のオランダ(37)シントさんのプレゼント

実は私もシントさんからプレゼントをもらったことが1回だけだがある。プレゼントをもらうのは、別に子供に限ったことではなかった。ある年の12月、たまたまアムステルダムの国立美術館にヤン・ステーン(オランダの国民画家の一人)展を見に行ったところ、入り口でミュージアムイヤーカードを提示すると、係員がにこやかに小さなものを差し出し、そして「シントさんからのプレゼントですよ。」と言うではないか。オランダ語がダメな私でもこのくらいのオランダ語なら理解できる。「有難う。」と言って、見るとレターチョコ。日本の皆さんはご存じないかもしれませんが、これはシントニコラース祭の定番のプレゼントのお菓子の一つで、アルファベットの大文字一字を形にしたチョコレートなのだ。このプレゼントをもらって、今日が12月5日だったことに改めて気付いた。国立美術館も味なことやるなと感心したものだ。

その日の展示では、ヤン・ステーンがクリスマスの家庭の光景を面白おかしく絵に描き止めているものがあった。多分、プレゼントをもらえなくて泣いている子と、たくさんもらってうらやましがられている子、それを微笑ましく見ている大人たち。泣いている子はどうもヤン・ステーン自身の小さい頃の姿のような気がする。彼はどちらかというと男前ではないが、彼の絵にはどこかに自画像を忍ばせていることが多く、よく見るとこの子は確かに似ている。写真を拡大してご覧ください。

シントさんのプレゼントと言えば、レターチョコのほかには、人形の形をした焼き菓子(硬いクッキーのような)、マジパンのお菓子などがある。しかし、このアニス風味のマジパンだけは私がどうしても最後まで馴染めなかったものの一つ。ジュネーバーやブラックドロップのアニス風味は早くから殆ど気にならなかったにもかかわらず・・・。自分でも、どうしてなのか未だに分からない。

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