追憶のオランダ(28)パナクック
パナクック (Pannekoek) って何だろう?
これは小麦粉をベースにして焼いた薄いお菓子で、日本でも一般的なホットケーキあるいはパンケーキの先祖で、オランダではこう呼びます。ということで、一度パナクックなるものを食べてみようと専門にやっている店に行き、メニューを見て、一瞬、おやっと思いました。ホットケーキはバターとメープルシロップをかけて食べるものという既成概念を持っていたため、メニューに書いてあることが信じられなかったのです。小麦粉で焼いたものの上にトッピングとしていろいろな果物を乗せるところまではそれほど無理なく理解できましたが、さらにチーズ・ベーコン・ハムなどちょっとお菓子に組み合わせるにはどうかと思えるようなバリエーションがいろいろ書いてあるのです。もちろん、テーブルにはオランダでは定番のストロープ・シロップという甘いシロップも用意されているし、粉砂糖も置いてあります。これらは好みによって出されたパナクックに振りかけるものです。
いざ出て来たものは、筆者が考えていたパンケーキよりもはるかに薄くペラペラの感じで、しかも直径が30cm前後もあろうかという大きいものでした。じつは、何がお勧めかと店員に聞いてベーコン・チーズ・パイナップルをトッピングしたものを注文したのです。なんという取り合わせとは思ったのですが、食べてみると意外や意外、これはお菓子の類ではなく、腹持ちのする軽食そのものだと感じました。あまりにホットケーキというお菓子の頭があっただけに驚きと同時に新しい世界を味わいました。このようなパナクックを食べさせる店はあちこちにあり、オランダの国民的な食べ物だということがよく分かりました。余談ですが、私が初めてパナクックを食べたデルフトの広場に面した店には、アメリカの大統領ビル・クリントンが来て食べたと、店の壁に写真が貼りだしてありました。
大きなパナクックとは対照的に、ポファチェス(Poffertjes)という極小の一種のパンケーキがあります。材料はパナクックとほぼ同じ、小麦粉・卵・牛乳ですが、パナクックは大きなフライパンで焼くのですが、ポファチェスは大きな鉄板に浅いくぼみがたくさん空いたタコ焼き器のようなものに流し込んでやいたものです。タコ焼き機のくぼみは半球ですが、ポファチェスのものはそれよりずっと浅いのです。注文すると十数個のポファチェスが皿に盛られてその上に粉砂糖がたっぷり振りかけられています。これも結構腹に溜まりますが、これはどちらかというとホットケーキのようにおやつにいいお菓子です。