人声天語12~樹木希林の残した言葉
テレビを見ていると俳優の本木雅弘が出ていた。不祥事で問題となった旧ジャニーズ事務所に所属し、シブがき隊のメンバーの一人だったあのモッくんだ。寿司食いねえを歌っていたころのイメージとは180度違って、落ち着いた雰囲気で静かに語る口調がとても印象的だった。後に俳優に転身し企画を自ら持ち込み、主役も務めた映画『おくりびと』が2009年にアカデミー賞外国語映画賞を受賞している。
タレントのデビューは簡単ではなく、とにかく何でもいいから顔を売ってある程度認められるようになってからが勝負だ。大人の世界に入るか入らないかの年齢で世の中の流れにとりあえずは身を任せ、後は自らの努力で自分を確立させていく・・・そんなことができるのは何百万人に一人かもしれない。
内田也哉子と結婚して女優・樹木希林、内田裕也夫妻一家の婿養子となり3児を設けたが、母親となった樹木希林の影響は、俳優業にとっても人生観にとっても大きかったと語る。この時披露されたエピソードが印象的だったのでここで紹介したい。
樹木希林が娘也哉子と本木夫妻に残した言葉に次のようなものがあるという。
「驕らず、人と比べず、面白がって、平気に」
ここで言う「面白がって」は単に楽しむこととは違う。何か失敗したときに、そんな「ほころびさえもダメな部分もさらけ出して味わうことが、人間、年を取ることの醍醐味」だという。
「平気に」の意味は単に「失敗を気にせず」とは少し違って、「すべてよかったことにする」ことだという。後ろ向きの思考ではなく「すべて前向きに考える」に近いと思われる。
これだけの説明で果たして希林の言いたかったことを理解できたかどうかわからない。しかし、自分としては、俳優でなくても、一般人の生き方にとっても非常に含蓄のある言葉だと思う。そして、アイドルとして世に出て、その後の努力によって俳優として立派に成功した本木の生きざまに少なからず感動を覚えたので、誰かに伝えたかった次第である。