フランスあれこれ49~フランス人の英語

50年以上前、パリに赴任して間もなくの話。シャンゼリゼ通りから少し入ったところにある豪華ホテル”Hotel George V”(ホテル・ジョージュ5世)のコンセルジュ(一言でいえば何でも相談人)にちょっとしたことを英語で相談しました。それに対しフランス語でペラペラ一気にしゃべって「どうだ!分かったか?」と言った感じ。次のお客がどうやらアメリカ人、英語で質問したところ同じようにフランス語でペラペラ…一応英語は判るらしいが話さない!

また別の機会です。今回は道に迷ったので通りがかりの人に下手なフランス語で訊ねたことがあります。私の下手なフランス語に合わせるようにひとこと一言丁寧に、そして一部の言葉をリピートして説明してくれました。

成程!フランス人はフランス語以外はしゃべらないのだ、出来ないのだと理解していました。

それから20年余り経ってフランスに二度目の赴任をしました。

今回も街中で恐る恐るフランス人にフランス語で物を訪ねました。そこでビックリ!彼からの返事は立て板に水を流すような英語で返事が返ってきました。下手なフランス語で無理をするな!と言っているようにすら聞こえます。

その後しばらくして日本からの得意先が見え、ノートルダム寺院を見下ろす一流のフランス料理店に案内しました。私がお客の好みを聞きながら料理を注文していたのですが、日本人同士の会話の中に英語が混じっていたのでしょう。それを耳にしたボーイが英語でその料理の説明をペラペラやりだしました。注文のあと私はちょっと席を立ってそのボーイさんにあれは失礼だよと注意したことでしたが、これが時代を理解した発言だったかどうか。

20年の空白の間に一体何があったのかと言う疑問を持ちました。長年の友人に相談したところ、一言で言えばフランスもようやく国際化の波に乗ったという事だよ。日本からの旅行者も多く、英語で注文を受ける時代だと笑っていましたが、改めて以下の説明を聞きました。

歴史的に見てフランスはイギリス嫌い、ドイツとの戦争など歴史的な背景もあって外国語嫌いだったが、よく自国を見るとフランス人の3分のⅠが国語=フランス語を話していなかったのが20年前、フランス語を喋る人の3分の一が文盲(失礼、正しいフランス語を書けない、或いは間違いだらけ)だった。以来フランスは「フランス人はフランス語を使え」とばかり国語教育に注力してきました。国際環境も今やECからEUへと広がりを見せ国際化の波が打ち寄せてきている。要は時代が変われば事態も変わるという事のようでした。同時に教育の在り方でも国語は文学、外国語は会話にどうやら力点を置いていた様子です。

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