人声天語7~文明の利器の裏側で
先日、マイクロソフト社の基本ソフト「ウィンドウズ」を搭載したパソコンが次々と異常停止するという問題が起きた。企業向けセキュリティ対策用ソフト「Falcon=不正侵入検知システム」で世界No.1のシェアを誇るのが「クラウドストライク社」で多くの大手企業に採用されている。
調査の結果、今回の障害は、企業向けセキュリティソフトのウィンドウズ向けの設定をアップデートした時に起きた。ソフトを更新した時にその内容を検証するシステムに不具合があり、問題のあるデータを見逃したまま導入したことが原因となった。
マイクロソフトによると、不具合の影響を受けたウインドウズの端末は850万台にのぼり、被害総額は世界で2.3兆円になるという。そのうち最も金額が大きいのが医療業界で、金融、航空と続く。
世界には悪意を持ってコンピュータシステムを攻撃するハッカー集団がいくつもあるが、クラウドストライク社は、このようなサイバー攻撃の実態をあぶり出し、ハッカーを特定する実績でも知られる。2016年、米大統領選挙を控えて民主党のサーバーがハッキングされた事件を調査し、ロシア政府とつながりがある二つのハッカー集団の関与を指摘したことで一躍有名になった。
最近では、米保険業界最大手のユナイテッドヘルスがハッキングされシステム障害を起こしたため、同社の株価は大きく下げることになった。日本でも、日本年金機構がウイルスメールにより年金加入者情報約125万件が流出したり、春日井リハビリテーション病院がランサムウェアによって5万人分の電子カルテが暗号化され閲覧不可になったというような事例がある。
このようにして、サイバーセキュリティ企業への依存度は高まるばかりである。同社は、米国政府機関の認証を受けるなどしたことで世界の大手企業が採用することになった。このことで、空港など重要インフラで世界規模の混乱が生じた背景のひとつでもあるといわれている。
ウインドウズ以前と以後とでは、その便利さ快適さに雲泥の差があり、誰もがその恩恵を受けてきた。一旦システムが異常をきたすと、我々の日々の暮らしに想像を絶するほど大きな影響がでる。文明の利器の裏側に潜む得体のしれない悪魔が顔を出したような感じがしてならない。