おぼろげ記憶帖 25~朝市 マルシェ(2)

日本では平成になり、一度目の滞在から25年が経過していました。政治経済の様相がすっかり変化し、女性も子供をベビーシッターに預けて働くのが普通になっていました。大規模なスーパーから中型、小型と大きさも色々。贅沢な高級スーパーから庶民的な店。安価で大量の買いこみの出来る店は少し郊外にとその発展のありようは日本と同じように思われます。日本がヨーロッパに追いついたのかその反対かは判りませんが世界中が少しの前後はあっても同じ状況下にあったのでしょう。それでも食生活に執着するフランス人は生鮮食料品についてはまだまだ古き良き時代の習慣を引きずって暮らしていました。マルシェは以前にもまして規模が大きくなり扱う商品も台所道具や衣類までも出ていました。特に魚には目を見張りました。ふんだんに氷を使い新鮮で種類も豊富になった魚が並んでいます。何という時代の変化、輸送技術の発達でしょうか!日本からの旅行者、時にはフランス

人の来訪者が多い我が家では魚は大いなる助っ人でした。亀の甲のような黒い蟹、名前も亀蟹。オードブル用に一人一匹、子持ちを魚屋に選んでもらって茹でて冷蔵庫へ。珍しくて美味しくて料理人にとっては次の料理までの時間稼ぎになりました。もう一つはマグロです。頭の方から輪切りにして料理するのがフランス風。いつどなたが教えたのかトロの部分だけ手に入ることがありました。魚屋では捨てる部位でしたから最初は安価で良かったのですが余りにも日本人が喜んだからでしょう。だんだん値段が上がっていきました。それでも魚よりも高価なチューブ入りのワサビを日本食料店で買っていました。遂にワサビの代わりにまだその頃余り普及していなかった柚胡椒を日本から来る人にお願いする羽目になってしまったのでした。小ぶりの鰈。これも余りフランスの食卓にのぼらない魚。手ごろな鰈を買い占めて塩をしてバーベキュー用の串に刺して台所で吊り下げます。一夜干しの鰈が出来上がり冷凍庫へ。乾燥した土地ですから臭いも残らず重宝した魚でした。10㎝くらいの角のついたさんま、2kgもあるような鮭で塩鮭にしたり、忙しくても豊富な魚たちでした。近頃は観光客の見物も多くなりマルシェはフランスの一大風物詩になりました。スーパー、マルシェだけでは足りず、肉、パン、ワインなどは行きつけの店へ。貪欲な人達の胃袋を満たすことについては日本のグルメの人達の比ではありません。食文化の豊かさに誇りを持つ人たち。あの豊富で種類と量の多さの食材を思い起こす時 “あァ~食べたい!”と思い、テレビの街歩きでマルシェの画面を見るのは私にとって目の毒、胃の毒以外の何物でもありません。

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