おぼろげ記憶帖 18 レストラン(1)セーヌの源流

 

ある年の復活祭、この年は4月末でした。毎年復活祭はどのように計算して決めるのでしょう。時には1か月も前後することがあって定まっていないのです。でもその頃には草木が一斉に生き返り、花が一斉に咲き出します。パリ郊外のフォンテンブローの森を抜ける時気温が10℃と表示があり、セーターを持ってくるのだと思いましたが3日過ごしての帰りは半袖のポロシャツでいいほどに気温が上がりお天気も良くなっていました。冬をじっと耐えてこの日を待ちかねたように旅に出る気持ちがよく判ります。

この日は「セーヌの源流を求めて」という三輪晃久さんの写真集を見てその道をたどることにしたのでした。(何かのご縁でしょうか 帰国後の住まいから散歩の道すがらに三輪写真研究所がありました。令和になって訪ねましたら息子さんから亡くなりましたとお聞きし、もっと早くに気が付いていたらお話を伺えたのにとその道を通るたびに残念に思います)源流方向へ向けて車に任せて走るというのんびり旅行ですが、一泊目はCharon sur Seineという町の“Cote d’Or”というホテルに泊まりました。

翌日細い道をたどって源流へたどり着き木陰にひっそりとたたずむマリア様の像に出会えた時は感激ひとしおでした。ここからあのパリに流れ、ルーアンからルアーブルを経て大西洋に流れる全長780㎞、多くの観光名所と共に流れているのだとは信じられないくらいに細くて澄んだ清らかな流れでした。1118年創立のシトー派最古のフォントネイ修道院を楽しみにしていましたが昼休みで残念ながら入ることは出来ませんでした。地方へ行くと美術館も昼休み。行程が予定通りに進まないことがたびたびありました。2泊目はSaulieuという小さな町の有名なミシュラン2つ星のオーナーシエフの名前も同じ“Cote d’Or”。その日に走れる距離を考えて午後に予約を入れますが一番遅かったのでしょう。テーブルは入り口に一番近い席、夜遅くまでゆっくりと食事を楽しみますからホテルも併設されています。テーブルを前々から予約していくようなレストランですからホテルは二の次。最後に残ったのが素晴らしい部屋だけ!こんなことでもない限りこんなに贅沢な部屋に泊まるという経験をすることはないでしょう。神様の思し召しとばかり翌朝まで疲れとお腹一杯でぐっすりと眠りました。折角なのに滞在時間が短く勿体ないことではありました。

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