おぼろげ記憶帖 37~フランスの野菜(6)

Artichaut アーテイーチョーク(朝鮮あざみ)
ビックリするほど変わった形の野菜です。フランスでは夏の定番のオードブルですが日本ではやっと外人向けの高級スーパーで干からびたのを見つけました。

とても買って食べる気持ちにはなれませんでした。直径15cmぐらいのボール型で茎を切って45~60分ただ茹でるだけ。浅い鍋では間に合わずに日本から蒸し器を持ち込んで茹でるのを専門にしていました。周りのペダルを一枚ずつ剥がすと根っこにほんの少し果肉があります。フレンチドレッシングを付けて食べます。捨てる方が多いペダルは別のお皿に綺麗に並べてその造形を競い合ったりもしました。芯は10cmほどで毛をむしり取るとじゃがいものような柔らかい部分があります。これも切り分けてサラダにしますがもうペダルの部分だけでお腹いっぱい。満足感100%です。小ぶりの芯の部分のオリーブオイル漬けの瓶詰を見つけました。ペルー産です。懐かしくてつい買ってしまいます。

ボルドー地方を車で走っていましたら背丈位の立派なたくましい植物に出会いました。草でもなく木でもない畑でした。よく見るとあちこちから空に向けて突き出しているのでした。物凄く勢いよく!この力強さが食べた後の満足感だと納得したのでした。

とにかく見慣れない野菜です。日本から来る人達、駐在員の奥様もどうして食べるのやら皆目見当もつかず、家庭料理なのでレストランでは出てきません。蒸し器が役に立って何度アーテイチョークパーテイを開いた事でしょうか。かくいう私も初めは眺めていただけでどうしたらいいのか思案に暮れていました。

ある時ベトナムに駐在していた方が来訪され、懐かしい!食べたいとおっしゃって作り方、食べ方を教わったのでした。ベトナムは遠い昔一時フランス領だったことがあり、年寄りはベトナムに好意的でありベトナムにはフランス語を話す人たちもまだ少しいます。フランス風の建物も広場の周りに立っていました。フランスの中華料理はベトナム中華で生春巻きもフォーもあります。植民地時代の名残りが今なお少し残っているようです。そんな経験から食べ方をお教えすることは少しでもお役に立てたらと思ったのでした。そして病みつきになって良く茹でました。とても庶民的な値段でこれぞフランスの伝統的家庭料理かと思います。

懐かしく思い出しても食べることは現地に行かないと無理と諦めていました。でもそれが叶ったのです。同じマンションに住む1階の奥様。ボタニカルアートを描かれるる方です。ネットで種を取り寄せて栽培しておられました。いろいろとご苦労はあったようですが見事に成長して花が咲き食べられるまでになりました。早速お願いして頂戴しておよそ30年ぶりに懐かしい味を味わうことが出来ました。気温と土壌の関係があるかと思いますが、あのごつごつとふてぶてしい感じのフランス産と違って小ぶりで柔らかく、これもお国柄かと思ったことでした。花は優しい薄紫でとても綺麗でした。

《お知らせ》
37回に亘って連載してきた「おぼろげ記憶帖・フランス篇」は今回で終了となります。
奇しくも今年オリンピック・パラリンピックが開催されたのは、ヨーロッパの代表的な都市パリでした。
パリと言えばエッフェル塔やルーブル美術館、ファッションなど華やかなことが思い浮かびますが、現地での生活を通して見た素顔のフランスと、フランスから見た日本を紹介していただきました。
本日、掲載終了にあたり、編集部より心からお礼を申し上げます。

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