おぼろげ記憶帖 35~フランスの野菜(4)
フランスの野菜(4)
Asperge アスパラガス 1966年6月のことだったでしょうか、赴任してまだ日の浅かった頃のことです。June Braideです。事務所の秘書の結婚パーテイが郊外の丘の上の街でありました。招待されたのはフランス語の堪能な駐在員と私達2人。午後から夕方、夜明けまでのパーテイだとのことで先ずはお昼ご飯をと野外にテーブルのあるレストランへ行きました。
彼の勧めで注文したのはアスパラガス。時間が掛かりますと言われてもOKをしました。どれくらい時が過ぎたでしょうか!待ちくたびれた頃真っ白い太いアスパラガスがアスパラガスの絵を描いた大皿に湯気の立てて山盛り出てきました。これが3人分? そのレストラン特製のマヨネーズが一緒でした。私達は缶詰か瓶入りの細く柔らかく茹でたものしか知りませんでしたからその新鮮なみずみずしいアスパラに感激ひとしおでした。注文を聞いてから皮をむき、茹でたのでしょう。その間にソースも作れます。独身の彼は折あらば食べようと思っていたかもしれません。需要と供給のバランスが見事に取れたひと時でした。
アスパラ専用の陶器やガラスのお皿に凹凸を付けたのや絵を描いたものなどこの時期の食卓を如何に待ち望み楽しんでいたかが伺えるようでした。翌年から私もマルシェでダース、またはキロで買い、ソースも手作りで味わいました。全て白。グリーンアスパラは一度も見たことはありませんでした。値段は結構お高いのです。いくつかの産地のものが出回ったあとロアール地方から届きます。これが一番高級で太くて柔らかく甘い!常に産地をしつこく聞くフランス人の気持ちが判ります。
マヨネーズの作り方は簡単です。丸くて大きなカフエ・オ・レの陶器のカップに卵黄1つとマスタードをたっぷり大匙1を入れてサラダオイル1カップを1滴ずつ垂らして泡立てます。私は不精をして電動泡だて器の羽根を一つにして混ぜ、塩・コショウで味を整えて簡単に作りました。手抜きの濃厚なマヨネーズ。翌日までは置いて置けないのでポテトサラダを作りますが、これがこの時期の献立でした。
ジャガイモのおいしい国ですからポテトサラダも自分で言うのも変ですがほくほくして絶品でした。それから長い年月が立ちましたが日本では需要が少ないのでしょうか、手に入りにくい食材です。北海道で最近ホワイトアスパラが少し作られているようですが出回っておらず、グリーンアスパラばかりです。それもメキシコあたりからの輸入物が多いようでどうして白いのを作らないのかと思います。美味しいのに…と食いしん坊にとっては残念な思いです。